2日目の朝を迎える
昨晩、日が暮れた後にようやくたどり着いたこのテント場でごはんを食べたら、2人とも疲労と安心感で、すぐに爆睡した。暗い中、床の整地などもせずに雑に立てたテントで爆睡できたのはいいものの、大事なことを忘れていた。
この2人にとっては本当に大事なこと。
それは、翌日の登山計画だ。
昨日の反省はどこにいったのか、この日も起床したのは8時過ぎ。もちろん昨晩声をかけてくれたおじちゃんはとっくに居なかった。
この日の行程について、なにも考えていなかったわけではない。
- 泊っていた金糞峠から約1時間半で武奈ヶ岳頂上を目指す
- 頂上でお昼を食べたら、坊村バス停まで下山 約2時間半
お昼休憩1時間を入れて&ちょっと余裕をもったコースタイムで計算しても、5時間の行程だ。 ゆっくり準備をして出発しても、夕方までには下山できるだろう、と考えていた。 「だから朝は急ぐ必要ない。」 と、そう思ってアラームなんかもあわせてなかった。
彼は彼で、この旅はボクに主導権はないんだ、とでも思っていたのか、なにも言わずわたしのことを信頼してついてきてくれた。(この時までは…)
朝の優雅な時間
呑気に起床したわたしたちは、この旅の目的でもあった「コーヒーミルで豆を挽き、優雅にコーヒーを淹れる」というのを、昨日の夜御飯を挽回するかのごとく、思う存分たのしんだ。とくになんにも景観がない金糞峠も、わたしたちにはとっても美しくって、もっとここで過ごしたい、という気持ちが二人にあったからだった。
ゆーっくり朝ごはんを食べ、近くの沢で水を汲んだり、写真を撮ったり。なかなか出発しないわたしたちのすぐ横を、たくさんのハイカーたちが通り過ぎて行った。
その光景でようやく焦り始め、準備が完了したのは10時前。さすがにゆっくりしすぎ!
1年前のことですが、思い出すと、よくここまでのんびりできたよな~と、とっても未熟だったと気づきます。反省。
本当はここに泊まりたかった
金糞峠を出発して早々、またしても紅葉に足を止められる。
2人して撮影に夢中になり、なかなか進めない。昨日のようなことにならないよう、お互いにお尻をたたきながら進むこと1時間半。
八雲ヶ原に到着。
いくつか、テントがあった。
「い~な~!」
昨晩、わたしたちがたどり着きたかった場所。水面がキラキラして眩しかった。想像していたより素敵な場所。
「絶対つぎはここで泊まろう!」と、二人で誓った。それを叶えるために、もっと修行するぞ!カップル登山をもっと快適でスムーズで、うまくいくように経験を積みたい!と、思った。
頂上に到着。失敗はまだまだ終わらない
八雲ヶ原を出てから頂上まではあっと言う間だった。
頂上は、思っていたよりも広く壮大で、そして快適だった。
みんな、各々すきな場所でのんびり休憩してる。お昼ご飯を食べるには最高!いままでの登山でも、上位を争うくらい、好きな頂上だ。
わたしたちは、滋賀の景色を眺めながら、塩ラーメンをたべた。頂上で食べるラーメンの美味しさったら!
とか言いながら頬張っていたら、ふとあることが気になった。「バスの時間、大丈夫よね?」
とっくに行ってしまったバス
昨日の朝、家を出て滋賀に向かう途中で、登山口行きのバスがないことに気づき急遽プランを変えた。
その登山口へ、今日は下山をしていく予定だ。頂上でのただいまの時刻、13時。
え、もしかして、今日もまたバスない?
でも頂上にはこんなに人がいっぱいいるし、なにかしらの交通の便あるってことよねー?と不安をかき消そうとしながら、近くにいた女性登山者にこんな質問をした。
「今日ってなにで来られてるんですか?」
すると女性は「車ですよ~」と。
「ここにいる登山者のひと、バスとか電車とかで来てる人もいますよね?」とわたし。
「どうなんでしょうね~ほとんどの人が車なんじゃないかな~おほほ~」と優しく答えてくれた。そんなん知るか!と、ほんとは思ったと思う。
運よくwifiは届いた。スマホで何度調べても、バスの最終はとっくに出ていた。昨日のうちに気づいていれば。もっと早く出発して、きた道を引き返せば志賀駅の方向に下山できたはずなのに。でももうこの時間からその道は厳しいから、バスの来ない坊村バス停に下山するしかない。
なんの知識も、登山地図の見方も、まだ初心者だったわたしたしは、そうすることにした。
とはいっても「下山さえすればどうにかなる」と、まだまだ気楽なわたしたちだった。近くのホテルや旅館や、さいあく駐車場かどっかでまたテント張ってもう一泊しよう!と、なった。わたしたちはいつも、焦ったときの「ポジティブな一致団結力」だけはばっちりだった。
ふつうの旅なら「どうにかなる」の物語は結果お土産話になるが、山で「どうにかなる」は、危険。命とりになる。この登山での失敗をきっかけに、わたしは登山計画についての重要性を知り、意識を大きく変えることができました。
「下山したあと、どうなるかわからない」ことはやっぱり不安で、足はどんどん進む。まともに休憩も取らず、2時間半、夢中で下った。
もうすぐゴールだ!そんな時、目の前に大きな倒木が立ちはだかった。そして後ろからは女性二人組が。この木をどう越える?と、4人であーだこーだした。
無事に越えることができ、女性二人組にお先を譲った。さぁ、もうすぐで下界に降りることができる!
ようやく山を下り切った。時刻は15時半頃だった。近くにお宿はあるかな?とキョロキョロしながら歩き、一つ見つけたが、今日はやっていないよ~とのことだった。
山を下るとすぐに、登山者が車を停められる駐車場がある。そこに、さっきの女性二人組が荷造りしているのが見えた。
わたしたち二人は顔を見合わせ頷いた。日本語をしゃべれない彼の目が「きみに託した!」と言っている。
わたしは恐る恐る彼女たちに近づき、できるだけ感じの良い挨拶をした。そして簡潔に「バスを逃してしまったので、駅まで乗せてってもらえませんか!???」そうお願いした。
彼女たちは一瞬戸惑っていたが、すぐにOKしてくれた。「わたしたちは近くの温泉によるので、何なら一緒にどうですか~?」とまで言ってくれた。
さすがに温泉をご一緒するのは厚かましすぎると思いやめておいたが、車内で交わした会話が、ソワソワとワクワクと安心感が混じり、楽しかった。優しい二人で良かった~!
最後の最後にわたしたちはなんてラッキーだったんだろう!本当に助かった。隣にいた彼はいつの間にか1000円札を3枚握りしめていて、下車したと同時に運転席の窓から彼女たちに強引に渡した。遠慮する彼女たちと、絶対受け取ってほしいわたしたちのやり取りが、静かな志賀の駅前にしばらく響いていたが、温泉代にしてください~ということで、受け取ってもらえた。
ということで、初のカップルテント泊は最初から最後までグダグダだったが、本当にたくさん勉強になったし、楽しい思い出もたくさんできた🌷 次こそ、もっと綿密な計画を。